令和3年度【介護職員等特定処遇改善加算】の変更ポイントについて

令和3年度(令和3年4月)より、介護保険サービス事業者を対象とした【介護職員等特定処遇改善加算】の制度が一部変更となります。今回は介護職員等特定処遇改善加算の変更ポイントについて、わかりやすく解説します。

ここで解説するのは介護保険サービス事業者を対象とした【介護職員等特定処遇改善加算】についての内容です。障害福祉サービス事業者を対象とした【福祉・介護職員等特定処遇改善加算】につきましてはこちらをご覧ください。

 

 

介護職員等特定処遇改善加算の制度全体像につきましてはこちらをご覧ください。

介護職員等特定処遇改善加算について

 

変更点①:加算取得により増えた事業所収入を職員に分配する際のルール

加算取得により増えた事業所収入を職員に分配する際には2つのルールを守る必要があります。

それは、
Ⅰ:職員を3つのグループに分ける
Ⅱ:グループ間の分配率を一定の範囲に調整する
というものです。

 

まず、職員を以下の3つのグループに分けます。

グループ①経験・技能のある介護職員

グループ②他の介護職員

グループ③その他の職種

 

次いで、グループ間の分配率を一定の範囲に調整する必要があります。

これまでは

・グループ①に属する職員の平均賃金改善額をグループ②に属する職員の平均賃金改善額の2倍以上にする

・グループ②に属する職員の平均賃金改善額をグループ③に属する職員の平均賃金改善額の2倍以上にする

となっていましたが

令和3年度以降に事業所収入を職員に分配する際は、分配率は以下の範囲に調整すればよいことになります。

・グループ①に属する職員の平均賃金改善額を、グループ②に属する職員の平均賃金改善額より高くする

・グループに属する職員の平均賃金改善額がグループ③に属する職員の平均賃金改善額の2倍以上にする

これまでに比べると、調整がしやすくなります。

 

加算取得により増えた事業所収入を職員に分配する際のルールを表にまとめると以下のようになります。

グループ
種別
①経験・技能のある障害福祉人材 ②他の障害福祉人材 ③その他の
職種
職員の
要件

介護福祉士の資格
+
所属法人等で
勤続10 年以上
などの介護職員

「経験・技能のある介護職員」
以外の介護職員
介護職員
以外の職員
分配の
ルール
「②他の介護職員」より高く 「③その他の職種」の2倍以上 改善後の賃金が年額440万円を上回らない

 

 

変更点②職場環境等要件の内容と選択ルール

介護職員等特定処遇改善加算取得の要件のうち、職場環境等要件についての変更です。

職場環境等要件を満たすための取組については、国より内容が提示されていますが、令和3年度よりその区分と内容が見直されました

令和3年度以降の区分と内容は以下の通りです。

区分 内容
入職促進に向けた取組

・法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化
・事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築
・他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等、経験者・有資格者等にこだわらない幅広い採用の仕組みの構築
・職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力度向上の取組の実施

資質の向上やキャリアアップに向けた支援 ・働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対する喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等
・研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動
・エルダー・メンター(仕事やメンタル面のサポート等をする担当者)制度等導入
・上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ等に関する定期的な相談の機会の確保
両立支援・多様な働き方の推進 ・子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備
・職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備
・有給休暇が取得しやすい環境の整備
・業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実
腰痛を含む心身の健康管理 ・介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、介護ロボットやリフト等の介護機器等導入及び研修等による腰痛対策の実施
・短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施
雇用管理改善のための管理者に対する研修等の実施
事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備
生産性向上のための業務改善の取組

・タブレット端末やインカム等のICT活用や見守り機器等の介護ロボットやセンサー等の導入による業務量の縮減
・高齢者の活躍(居室やフロア等の掃除、食事の配膳・下膳などのほか、経理や労務、広報なども含めた介護業務以外の業務の提供)等による役割分担の明確化
・5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備
・業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減

やりがい・働きがいの醸成 ・ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善
・地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施
・利用者本位のケア方針など介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供
・ケアの好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供

 

また、これまでは

・3つの区分から、それぞれで1つ以上の取組を行う

となっていましたが

令和3年度は以下のルールで取組を行なう必要があります。

・6つの区分から3つの区分を選択し、それぞれで1つ以上の取組を行う

 

変更点③職場環境等要件の実施時期

変更点②と同じく、職場環境等要件についての変更です。

職場環境等要件を満たすための取組については、これまでは、過去に実施したものも含んで良いこととされていましたが、令和3年度より、原則当該年度に実施することが求められるようになります。

但し、当該年度に実施できない合理的な理由があれば、前年度に実施した取組も含むことができます。

尚、処遇改善加算と特定加算とでそれぞれ異なる取組を行う必要はありません。

 

変更点④介護福祉士の配置等要件について

介護職員等特定処遇改善加算にはⅠ、Ⅱの2つの加算区分があり、加算率が高いⅠを取得するためには、介護福祉士の配置等要件を取得する必要があります。

この要件を満たすためには、サービス毎に定める特定の加算を取得していることが必要ですが、令和3年度より、取得する必要がある加算が変更になりました。

変更前後の加算は以下の通りです。

サービス 変更前(令和3年3月まで) 変更後(令和3年4月以から)
訪問介護 特定事業所加算(Ⅰ)又は(Ⅱ) 特定事業所加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)
特定施設入居者生活介護等 サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イ又は入居継続支援加算 サービス提供体制強化加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)又は入居継続支援加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)
地域密着型通所介護(療養通所介護費を算定する場合) サービス提供体制強化加算(Ⅲ) サービス提供体制強化加算(Ⅲ)イ又は(Ⅲ)ロ
介護老人福祉施設等 サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イ又は日常生活継続支援加算 サービス提供体制強化加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)又は日常生活継続支援加算
夜間対応型訪問介護 サービス提供体制強化加算(Ⅱ) サービス提供体制強化加算の(Ⅰ)又は(Ⅱ)
上記以外のサービス サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イ サービス提供体制強化加算の(Ⅰ)又は(Ⅱ)

 

 

令和3年度の計画の提出期限について

令和3年度の介護職員等特定処遇改善加算計画の提出期限は、令和3年4月15日まで延長となりました(4月または5月から加算を取得を開始する場合)。

本来の提出期限はの加算取得開始月の前々月の末日です。

 

尚、新規に加算を算定しようとする場合、加算の区分が変わる場合は体制届の提出も必要です。

 

★各自治体により提出期限などの対応が異なる場合がありますので、介護職員等特定処遇改善加算計画等を提出する際は提出先自治体の案内をご確認ください。

 

 

 

 

 

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