共同生活援助(グループホーム)と言うと一般的には一つの建物の中での共同生活のイメージがあるかと思いますが、ワンルームアパートを利用する方法もあります。

ワンルームアパートを利用することで、一人暮らしに近い形での共同生活を提供することができます。

また、ワンルームアパートを利用したグループホームは集団生活が苦手な利用者さんにも大変好評です。

 

ここでは、既存のワンルームアパートを利用したグループホームの指定取得要件等について解説していきます。
 

便宜上【アパートタイプ】と呼ぶこととします。

 

共同生活援助(グループホーム)の指定取得全般などについてはこちら↓をご覧ください

【開業ガイド】障害者グループホーム(共同生活援助) の指定取得について

 

 

共同生活援助(グループホーム)【アパートタイプ】の概要

 

共同生活住居とユニット、事業所について

共同生活住居とは

基本的には、利用者さんが生活する建物のことを共同生活住居といいます。

しかしアパートタイプの場合は環境要件によりとらえ方が異なります。

環境要件 共同生活住居のとらえ方
アパート一棟をグループホームとする場合 アパートの建物全体
アパートの中の一部の居室をグループホームとする場合
(一般の住人も居住している状態)
アパート内のグループホームとして利用する複数の居室

※アパートの中の一部の居室をグループホームとする場合、居室が建物内で点在している(隣り合わせになっていない)場合、共同生活住居として認めない指定権者もあります。

 

1つの共同生活住居の定員は以下の範囲にしなければなりません。

要件 定員
新築の場合 2~10人
既存の建物を使用する場合 2人~20人
都道府県知事が特に必要と認めた場合 21人~30人

 

ユニットとは

複数の利用者さんが一緒に生活する単位のことをユニットといいます。
1つのユニットの定員は2人~10人となります。

1共同生活住居=1ユニットが最もスタンダードな形となります。
※1つの共同生活住居に2つ以上のユニットを配置することもできます。

 

事業所と共同生活住居(ユニット)の関係

必ずしも1つ共同生活住居=1事業所とする必要はありません。

主たる事務所から概ね30分程度で移動できる範囲内の複数の共同生活住居を1つの事業所とすることもできます。 

また、1つの事業所の定員は4人以上とする必要があります。

例えば、共同生活住居の定員が2人の場合は、少なくとも2か所のアパートで共同生活住居を運営することが必要になります。

 

共同生活住居の立地・建物

 

共同生活住居の立地について

共同生活住居として利用する建物の立地は都市計画法等により以下の要件を満たす必要があります。既存のワンルームアパートを共同生活住居として使用する場合には、問題になることは少ないと思いますが、共同生活住居用に建物を新築する場合には特に注意が必要です。

建物の立地について

●市街化区域内であること(市街化調整区域内は原則不可)。 ※非線引き区域内の場合は要確認。
●用途地域が工業専用地域以外であること

指定の窓口となる自治体の開発許可担当部署が窓口となります。

 

また、利用者さんが、一般の住宅と同様に、利用者さんの家族や地域住民との交流の機会が確保されること、利用者さんの生活がグループホーム及びその併設事業所のみで完結するような生活とならないことなどの趣旨により、

建物の立地【障害者総合支援法等】
●入所施設や病院の敷地内は不可
●家族や地域住民と交流できる場所に立地すること
となっています。

 

共同生活住居の建物の用途について

一般的にワンルームアパートを共同生活住居として使用する場合の建物の建築基準法上の用途は共同住宅または長屋となります(例外あり)。

建物のタイプ 建物の用途
ワンルームアパートなど 共同住宅、長屋

 

建物の建築基準法等への適合について

共同生活住居として使用する建物は、建築基準法等の法律に適合していることが必要です。

建物の状況 建物の用途
既存または新築の建物を共同生活住居として使用する場合 建物の広さが200㎡を超える場合、確認申請+用途変更という手続きが必要になる場合があります。
確認申請+用途変更が必要ない場合でも、建築基準関係規定には適合させる必要があります。
昭和56 年5月31日以前の基準により建築された建物は耐震基準を満たす必要があります。
共同生活住居として使用するために新築した場合 建築基準法に従って建てられ、建築基準関係規定に適合している必要があります。

※検査済証または建築確認申請を受けていることの証明が必要になる場合があります。

指定の窓口となる自治体の建築確認担当(建築主事)部署が窓口となります。

 

建物の消防設備について

共同生活住居として使用する建物には一定の消防設備・避難設備を設置することが必要です。

基本的には消防法施行令別表第1の(6)項ロまたは(6)項ハの基準に適合した消防設備・避難設備が必要です(例外あり)。

(6)項ロ(6)項ハの違いは、入居する利用者さんの状態像によります。

また、アパートの一部を共同生活住居として使用する場合は、複合用途となり、(16)項イの基準に適合させる必要があります。

必要な設備の要件は建物の状況により異なり、また非常に複雑なものになっていますので、確認が必要です。

 

障害支援区分4以上のものが入居者の8割を超える場合

要件 用途 代表的な消防設備・避難設備の例
アパート全部を共同生活住居として使用する場合 (6)項ロ 自動火災報知設備
スプリンクラー設備
アパートの一部を共同生活住居として使用する場合 (16)項イ

自動火災報知設備
スプリンクラー設備

 

障害支援区分4以上のものが入居者の8割を超えない場合

  用途 代表的な消防設備・避難設備の例
アパート全部を共同生活住居として使用する場合(アパートの延床面積275㎡以上) (6)項ハ 自動火災報知設備
スプリンクラー設備
アパート全部を共同生活住居として使用する場合(アパートの延床面積275㎡未満) (6)項ハ 自動火災報知設備
アパートの一部を共同生活住居として使用する場合(アパートの延床面積300㎡以上または特定一階段等防火対象物かつ共同生活住居の延床面積275㎡以上) (16)項イ 自動火災報知設備(建物全体に設置)
スプリンクラー設備
アパートの一部を共同生活住居として使用する場合(アパートの延床面積300㎡以上または特定一階段等防火対象物かつ共同生活住居の延床面積275㎡未満) (16)項イ 自動火災報知設備(建物全体に設置)
アパートの一部を共同生活住居として使用する場合
(アパートの延床面積300㎡以下かつ共同生活住居の延床面積275㎡以上)
(16)項イ 自動火災報知設備
スプリンクラー設備
アパートの一部を共同生活住居として使用する場合
(アパートの延床面積300㎡以下かつ共同生活住居の延床面積275㎡未満)
(16)項イ 自動火災報知設備

※屋内階段が1つしかない建物の1、2階以外の階に共同生活住居がある場合、特定一階段等防火対象物に該当

事業所の所在地を管轄する消防署(予防課)が窓口となります。

 

その他の規制(条例など)

それ以外にも条例等の規制がある場合は従う必要がある場合があります。

●バリアフリー条例など

 

ユニットの内部・設備

ユニットには提供するサービスに応じて生活に必要な設備が必要ですが、アパートタイプの場合、利用者さんは、各居室にある風呂、トイレ、洗面所、台所、食堂などを使用するここととなります。

一方で利用者さん同士が交流するためのスペースを確保することが必要です。

ユニットに必要な設備

●各利用者さんの居室
●交流するためのスペース

交流するためのスペースを確保する方法としては、利用者さんの居室以外に1部屋居室を確保する方法が一般的です。

 

居室

居室についてはプライバシー保護の観点などにより以下のような規定があります。

居室の規定

●定員1人
●広さ7.43㎡(和室であれば4.5畳)以上+収納スペース

利用者さんの希望により居室を2人部屋として使用することはできます。

 

 

 

 

共同生活援助(グループホーム)の指定取得全般などについてはこちら↓をご覧ください

【開業ガイド】障害者グループホーム(共同生活援助) の指定取得について

 

共同生活援助(グループホーム)【アパートタイプ】の特徴について

ここまで、アパートタイプのグループホームの指定取得の要件などについて解説しました。

ワンルームアパートを使用することで、一般的な(いわゆるひとつ屋根の下型の)グループホームとは違った、一人暮らしに非常に近い形の共同生活を提供することができます。

アパートタイプのグループホームの代表的な特徴についてあげてみると以下のようになります。

アパートタイプの代表的な特徴
●利用者さん本人主体の生活スケジュールを組むことができる
●利用者さんの食事の調達(調理、買い物)、洗濯、掃除などの家事の自立を促しやすい
●利用者さんのプライバシーが高度に守られる
●利用者さんの自由度が高い(外出、外泊)
●利用者さん同士のトラブルが生じにくい
●自立度が高い=支援の必要度が低い=支援が容易な利用者さんが多い

 

一方でこれらの特徴を裏返して見てみると、以下のような側面が浮かび上がります。

アパートタイプの代表的な特徴(デメリットバージョン)
●利用者さんのスケジュールが乱れるリスクがある
●利用者さんの家事が疎かになるリスクがある
●利用者さんの安否の確認がとりづらい場合がある
●利用者さんの生活行動の把握が難しい場合がある
●利用者さん同士の交流が希薄になりやすい
●自立度が高い=障害支援区分が低い(またはつかない)=介護報酬が低い利用者さんが多い

 

 

最後に ご注意ください

ここに掲載している内容は、当センターが独自にまとめたものです。内容が自治体によって異なる場合、古くなってる場合、間違っている場合などがあり得ますので、ご注意ください。

指定申請を行なう際は、必ず、指定権者に確認を行ない、指定権者が示す内容に従っていただきますようお願いいたします。

 

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